The Hive

 ここなら安全だと思ってたんだが。
 心の内で、ケビン・ライマンは呟いた。
 あの妙な研究所を何とか切り抜けた俺たちは、スクープを探すといってどこかに行ってしまったアリッサと別 れ、地下鉄の駅にいたジムと出会った。
 とりあえず安全な場所という事でジョージが働いているラクーン総合病院へと逃げた。だが、病院の中にもゾンビがおり、生存者は俺たちを除いて医者が一人いるだけだ。
 すでに正面ゲートにはゾンビの大群が押し寄せてきている。裏口も同じで、この病院は完全に封鎖されている。
 ともかく、この病院から逃げなければならない。なんとしても、だ。

 病院で俺たち以外では最後の生存者であった医者が出て行くと、俺は愛用のコルト・ガバメントの残弾を確認してホルスターにおさめた。
「ここなら安全だと思ってたんだけどなあ・・・・・・」
 ジムが気弱そうに呟く。
「とりあえず、脱出ルートを探そう。地下にある水道から逃げられるかもしれない。」
 小型のメディカルセットを持ったジョージが言った。彼とは地下鉄の駅で出会い、そのまま行動を共にしている。
ともかく、まずはここの探索をはじめようぜ。」
 俺は扉を開けて、廊下に出た。あちこちが荒らされ、ぐちゃぐちゃになっている。ジムが何か見つけたのか、壊れたソファの奥に行って何か棒のような物を引っ張り出した。
「ふ〜ん。ちょっとは使えそう・・・・・・かな?」
 彼が取り出したのは、掃除などに使われるデッキブラシだった。ジムはそれを振り回し、右手に握る。
「おいおい、そんなもんが役に立つのか?」
 俺はジムに言った。あんなモップではゾンビを倒すどころか殴った瞬間に折れるのがオチだ。
「何もないよりましだろ。あんたみたいに銃は持ってないんだし。」
 そう、俺たちはここに来るまでに持っていた銃器や弾薬の殆どを使い切ってしまった。操車場などで見つけたショットガンなども、撃ち過ぎで壊れたり弾切れで邪魔になって捨てたりしたため残っていない。俺のコルトに装填されている7発の弾丸が唯一の武器といえるだろう。
 奥の方を向くと、ジョージが鉢植えにあったグリーンハーブを引きちぎっていた。
「気味の悪い病院だぜ・・・・・・」
 俺は呟いた。ジョージが奥の病室へと入っていくのを見て、俺もそれに続く。
「ジム。ここで待ってろ。」
「え、ちょっと・・・・・・」
 反論の声を上げようとするジムを無視し、俺は病室に入った。

 302号室。患者はおらず、ベッドの上には看護士のものらしい日記がおかれている。
 一応手にとって眺めてみたが、後半は殆ど意味のない文字の羅列で訳がわからない。とりあえず分かった事はこの病院に何か妙な化物がいるらしい、ってことぐらいだな。
「何かあったか?」
「とりあえず、武器の代わりになりそうなものが・・・・・・」
 ジョージは立てかけられていた松葉杖を手にとった。モップより少しは丈夫そうだ。
「後は、この棒きれだけか?」
 片手で器用にくるくると棒きれをまわし、俺は辺りを見回した。後何かありそうなのは・・・・・・あのロッカーか。
 俺はロッカーの扉を開けた。衣類でも入れておくためかロッカーは簡素なもので、仕切りも何もない。その一番下に、1挺の拳銃がおかれていた。
「ビンゴだ。」
 入っていたハンドガンを取って、残弾を確認する。マガジンに弾丸が入っていることを確かめて、俺はジョージに向き直った。
「ジョージ。銃を見つけ・・・・・・」
 突如。ガシャン、という音と共に天井の通風孔へと通じる金網が抜け落ちた。そして、そこから気味の悪い化物が降りてくる。
 そいつは床に降り立つと、直立した。でかいヒルみたいな生物が全身に張り付いている。そいつはまっすぐ俺の方向を向き、襲い掛かってきた。
「二人とも。なにやってるんだ・・・・・・」
 そのとき、扉を開けて、ジムが入ってきた。くそ!あの野郎、なんで来るんだよ!
「う、うわあああ!!」
 しかも、そのまま驚いて逃げちまいやがった。なんて野郎だ。
「ケビン!」
 ジョージが松葉杖を振りかぶり、そいつに振り下ろす。化物は一瞬仰け反り、俺はその隙に脇を通 って脱出した。
「うぐっ!」
 突然、ジョージがうめいた。振り返ってみれば、怪物は触手のような腕を伸ばし、ジョージの腹に突き刺そうとしていた。
 かすっただけであのダメージだ。直撃を食らえばひとたまりもない。
「くそったれ!」
 俺は怪物に肉迫すると、その胴体に棒きれを突き刺した。だが、あっけなく弾き飛ばされる。
「逃げるぞ!急げ!」
 俺はジョージに叫ぶと、病室の扉めがけて駆け出した。

「何なんだ、あの気味の悪い化物は・・・・・・」
 何とかあの化物から逃れ、俺は呟く。
 ジョージは軽症を負い、グリーンハーブで治療している。ジムは居心地悪そうにしているが、そんなことに構っていられない。
「大丈夫か、ジョージ?」
「ああ。だいぶ楽になった。」
 ジョージはしっかりとした足取りで起き上がり、折れて短くなった棒を持った。
「こいつを使え」
 俺は先ほど入手したハンドガンをジョージに渡した。
「すまない・・・・・・」
 ジョージはハンドガンを受け取ると、スライドを引いて薬室に初弾を装填する。始めてあった時はまだまともに銃も扱えていなかったが、ようやく慣れてきたようだ。
「ともかく、あの医者は何処にいるんだ?」
「ナースセンターだ。この階の電源を供給するといったきり、あそこに篭りきりだ。」
「じゃあ、そこに行くとしよう」

 医者のおかげで、ようやく三階の電力が復活した。彼はバリケードを通ってこちらに戻ってこようとした。
 その時、突然あの化物が現れた。そのまま医者を引き摺って、どこかに連れて行った。
「くそっ!」
 その時、後方の死体が起き上がった。俺はそいつにコルトを向け、引金を引いた。
 弾丸はゾンビの頭部に命中。ゾンビは倒れる。
「危ない所だった。」
 ジョージが構えていたハンドガンを下ろす。ジムもへっぴり腰で構えていたモップをおろし、一息つく。
 バリケードを超え、奥の回復アイテムと中にあった輸血パックを取っておいた。何か役に立つかもしれない。
「とりあえず役に立つのはこれくらいだな。下の階に行こう。」
 そのまま廊下に戻る。その時、通風孔からあの怪物が現れた。だが、そいつの動きは鈍い。
 ジョージがハンドガンを発砲した。弾丸は怪物に命中するが、効いた様子はない。
「撃っても無駄だ!逃げるぞ!」
 俺はそいつをやすやすと避け、エレベーターで二階へと降りた。

 ナースステーションに入った俺は、置いてあったハンドガンをジムに渡した。
「助かったよ・・・・・・」
 役に立つ武器を手に入れ、安堵したのかジムはモップを捨てた。
 薬品類が入っている棚をいじろうとした時、突如飛来したヒルに血を吸われた。俺は腹を抑えながら奥の止血用カートまで行くと、そこで止血した。その後、貼り付けてあった薬品コードの紙を取り、ポケットにねじ込んだ。
 ヒルには輸血パックの血でひきつけておいた。その部屋にあった輸血パックのうち一つをジョージに渡し、俺は部屋を後にした。もうあの化物との対面 はごめんだ。
「うわあああ!!」
 甘かった。廊下にはすでにあの化物が待ち構えており、ジムがそいつに組み付かれた。
 俺はタックルで化物の注意をひきつけ、輸血パックを使って化物をひきつける。そのまま億のゾンビもタックルでひるませ、仲間と共に一階に降りた。
 廊下にあった鉄パイプを引っ掴み、そのまま夜間受付に入る。
「ふう・・・・・・ここならあの化物もこないよな。」
 安心したように、ジムが呟いた。たしかに、ここなら天井につながる通風孔の出口はない。ゾンビもいないようだ。
「面白いものがあったぜ。」
 そう言って、俺はダンボールの上に置かれていた大型のハンドガンを手にとった。こいつはM93Rと呼ばれるマシン・ピストルで、一気に3発の弾丸を発射する事ができる。
「ジョージ、お前の銃と交換しよう。」
「ああ。すまないな。」
 ジョージのハンドガンを受け取り、マシン・ピストルを渡した。持っていた9ミリ弾をマガジンに込めて、残った弾丸をジムに渡す。
「ああ、ありがとう・・・・・・」
 俺は軽くジムの肩をたたくと、受付にあった防災用のシャッターの電源を入れた。そのまま後ろを振り返り、つとめて明るく振舞った。
「さてと、また地獄に戻るとするか。」

> ダン!ダン!ダン!
 起き上がったゾンビに向けて、俺はハンドガンの引金を絞った。
 狙いすました弾丸を喰らったゾンビはそのまま起き上がらない。俺は窓から乗り出したゾンビにも弾丸を撃ち、マガジンに弾丸を装填する。
「あいつが来たぞ!」
 俺は即座に輸血用パックを使ってやつをひきつける。カードキーをとると、俺はそのままロッカールームへ向けて走り出した。
「急げ!」
 そのままジムとジョージを逃がし、俺は最後尾につく。奥のゾンビに弾丸を撃ち込み、頭部に弾丸が命中したゾンビは倒れたまま動かなくなった。
 ガシャン・・・・・・そんな音と共に、突如後に気配が現れる。
 くそったれが。もう奴が来やがった。
 俺は手近なロッカーの一つに飛び込んだ。そのまま扉を閉め、身を隠す。
 怪物は血の匂いでもかぎつけたのか、ロッカーに向けて歩み寄ってきた。緊張が走る。
 俺は生唾を飲み込み、動きを止めた。緊張で心臓が跳ね上がりそうになる。だが、気付かれてはいけない。
 とっとと行きやがれ、この化物め・・・・・・そうだ、そうだ。早く行ってしまえ。
 そいつはロッカーの前を通り過ぎると、そのまま通風孔へと姿を消した。俺は安堵の溜息をつき、ロッカーからでる。
「危なかった・・・・・・」
 そのまま夜間受付に戻り、ジョージ達と合流。シャッターを開けて、ホールに出た。

 輸血パックはすでに使いき
り、俺たちにあの化物をひきつけるすべは残されていない。
「ジョージ!ジム!援護を頼む!」  二人に化物の援護を頼み、俺はエレベーターの操作パネルを見た。パネルの上に乗っかっているヒルを蹴り飛ばすと、先ほど入手したコード表から考えられるパスコードを打ち込む。
 ピッ。
 電子音が響いて、B2Fエリアへのエレベーター通路が解放された。続いて俺は屋上へ行くためのパスコードを打ち込む。
 ダン!ダダダン!
 側では二人が決死の攻撃で化物の侵入を防いでいる。二人の銃に入っていた弾丸が切れるのと、俺がパスコードを打ち終わるのがほぼ同時だった。
「B2エリアと屋上への道を開いた!急げ!」
 それだけ叫ぶと、俺は化物にガバメントを向け、撃つ。
 化物は仰け反るが、案の定ダメージを食らった様子はない。だが、そこに出来た隙を狙って俺たちはエレベーター管理室を抜けた。
 そのままエレベーターに乗り込む。あの化物はすぐにでも追って来るだろう。早くここを抜け出さなければ。
「どっちに行きゃいいんだ?」
 ジムがそう聞いてきた時、あの化物が現れた。俺たちに向かってまっすぐ突っ込んでくる。心なしか最初に見たときよりも歩く速さが上がっているような気がするが、気のせいだろうか?
「どっちでもいい!急げ!」
 ジムは適当にボタンを押した。追ってきた怪物の目の前で、ドアが閉まる。
「ふう・・・・・・」
 ジョージが安堵の息をついた。そのままエレベーターは屋上につく。
「ま、ここならあの化物が来る事もなさそうだ・・・・・・」
 屋上にはヘリポートがあった。だが、ヘリは出払っているのか、屋上には何もない。
「ケビン!助けてくれえ!」
 叫び声が聞こえる。ジムの方を見ると、カラスにたかられている。
「まったく、何やってんだよ、あいつは・・・・・・」
 こいつは最初に会った時からずっとこの調子だ。はっきり言って役に立ったためしがない。
 いままでのこいつとの逃走劇が頭に浮かぶ。ここに来る途中、爬虫類のような化物と遭遇した時、あいつはショットガンを持っていたにもかかわらずただ逃げ惑うだけだった。
 それだけではない。病院の裏で戦ったあのハサミムシの化物を相手にして、あいつは戦うどころか足手まといにしかならないというへタレぶりを発揮してくれた。はっきり言ってあいつがいても足手まといなだけだが・・・・・・
 だからって、見殺しにするわけにはいかねえだろ。
 俺はハンドガンを構え、カラスに狙いを定めた。ジムにたかっているカラスはこちらに気付いていない。そのまま引き金を引き、カラスを撃つ。
「うわっ!」
 ジムは突如飛来した弾丸に驚き、カラスの死体を蹴っ飛ばしていた。同じ頃、ジョージが残りのカラスを撃墜した。
「危ないじゃないか!俺にあたったらどうするんだよ!?」
 助けてもらった事に感謝もせず、あいつはそんなことを言いやがった。
 俺は青筋が浮かぶのをこらえて、ジムを無視してヘリポートの端へと向かった。そこには、瀕死の警官が倒れていた。
「おい、あんた大丈夫か?」
 ケビンはぐったりとした警官に声をかけた。その警官は苦しそうに顔をあげ、かすれ声でこう言った。
「・・・・・・ああ、・・・・・・同僚か・・・・・・ここにヘリがあると聞いてやってきたんだが・・・・・・一歩遅かったみたいだ・・・・・・」
「大丈夫か?しっかりしろ。」
 俺は救急スプレーを取り出すと、その警官に吹きかけようとした。だが、その警官は腕を持ち上げてその手を抑える。
「いいんだ・・・・・・俺はもう・・・・・・それより・・・・・・これ・・・・・・」
 その後、彼は何事かを呟いた。殆ど聞き取れなかったが、おそらく家族か恋人のと思われる名前だけが聞き取れた。
 彼は持っていたサブマシンガンを俺に渡すと、そのまま力尽きた。
 多分、俺は苦渋に満ちた顔をしていたと思う。近くの壁を叩き、悪態をついた。
「くそっ!」
 警察署に逃げたとき、これでもう助かったと思った。だが、数日後にゾンビの大群に襲撃され、度重なる戦闘で弾薬と人員の多数を消耗していた警察署はあっさりと陥落した。生き残った俺は死にもの狂いで警察署を抜け出し、同じく警察署を逃げ出したジョージとアリッサと出会った。
 そういえば、マークとシンディはどうしたのだろうか。彼らも生きているのだろうか。それとも・・・・・・
 いや、こんな考えは俺ににあわねえ。そう、あいつらはきっとまだ生きているはずだ。いまもこの地獄のどこかで戦っているのだろう。
「ケビン?」
 心配したのか、ジョージが声をかけてきた。俺ははっとしてジョージの方を見た。
「大丈夫か?」
「ああ。もう、大丈夫だ。」
 ハンドガンを腰のベルトに挟み、サブマシンガンを取って安全装置を解除する。
「ジムは?」
「先に行くといってエレベーターに乗った。多分地下二階だろう。」
 相変わらず勝手な奴だ。だが、しょうがないのだろう。普通の民間人ならこんな状況の中、混乱したりパニックになるのは当然の反応だ。
 まあ、その民間人のうちに入る俺が冷静でいられるのはどうしてなんだろうな。・・・・・・そういや、前に「お前は楽天家すぎる」とかいわれたことがあったな。もしかしてそうなのか・・・・・・?
「ジョージ。こいつを預かっていてくれないか?」
 そう言って、俺は先ほど廃液処理場で入手した鍵を渡した。何処で使うのか知らないが、もっていれば役に立つだろう。
「ああ、分かった。必要になったら言ってくれ。」
 ジョージは快く鍵を受け取った。俺は礼のつもりで先ほど入手したハーブを渡し、屋上を後にした。

 タタタタタッ
 サブマシンガンを連射し、飛びついてきたヒルを撃ち抜く。同時にあの化物が降り立ち、俺は資料と輸血パックを持って隣の部屋に移る。
 そこは実験室だった。先ほど入手した資料によれば、どうやらあいつは熱が苦手らしい。あとは奴をここに閉じこめさえすればいい。
「ジョージ。ここで待っていてくれ。」
 俺はジョージに実験室の外で待つように命じると、中に入って輸血パックを置いた。そのまましばらく待ち、あいつが来るのを待つ。
 案の定、あいつは現れた。目の前に降りてきた化物に銃を構えるジョージだが、化物はジョージには目もくれず実験室の中へと入った。そして、俺が置いた輸血パックへとかぶりつく。
 俺はそんな化物を一瞥すると、実験室の外へ出た。温度を高温にセットし、電源を入れる。
 実験室の中の温度が急激に上昇し、化物は平衡感覚を失って倒れ伏す。体中にまとわりついたヒルが剥がれ落ち、床に広がる。
「何とか片付いたな。」
 ジョージに向かって笑いかけ、温度を下げる。温度が戻ったところで実験室の中に入り、昼に取り付かれていた死体の顔を見る。
「おいおい・・・・・・マジかよ・・・・・・」
 その顔は、あの時の医者だった。まさかこんな化物になってるとは・・・・・・
「ケビン。これは何だ?」
 ジョージが彼の足元にあったカードキーを手に取った。「レベル2」と書かれている。
「さあ。ともかく、もっていたほうがいいんじゃないか?」
「そうだな。これは君に渡しておこう。」
 ジョージから差し出されたカードキーを受け取り、俺はサブマシンガンに弾薬を装填する。弾が装填し終わった所で、ジムのことを聞いた。
「なあ、一体ジムはどこにいったんだ?ここらにいるはずなんだが・・・・・・」
「分からない。ともかく、安全な場所へ脱出しよう。きっと彼とも出会えるさ。」
 ジョージに続いて、俺は実験室を出た。そのまま廊下へと戻り、地下二階のうち最後の扉へと向かう。
 ガシャン
 突然、後であの音が響いた。倒したはずのヒルの化物が俺たちの後ろに降り立つ。
 そんな!倒したはずだ!
「ケビン・・・・・・あれは、ジムだ・・・・・・」
「馬鹿な!?」
 俺はその言葉に驚愕して、改めてその化物を見た。上半身はヒルで覆われているが、確かにあのズボンはジムのものだった。
「逃げよう・・・・・・」
 戦っても勝ち目はない。ジョージが後の扉に目をやった。
「走れ!」
 俺は駆け出すと、最後の扉へと走った。途中で道を塞いだゾンビをサブマシンガンで撃ち抜くと、追ってきたジムのなれの果 てを牽制し、カードキーを通してロックを解除する。
「中に入れ!」
 俺は叫んだ。ジョージがすぐさま中に入り、俺も続く。化物の目の前で、硬い鉄の扉が閉じた。

 ジムが死んだ。
 そして、俺たちの前に再び現れた。最悪の姿となって。
 たしかにむかつく奴だったが、生死を共にした仲間だった。だが、ジムはすでにヒルに取り付かれ、化物になってしまっている。
「またかよ・・・・・・」
 またなのか。俺はまた、仲間を救う事が出来なかったのか・・・・・・
「ケビン。」
「・・・・・・なんだ?」
「酷な事だが、こんな所で立ち止まってはいられない。いつこの扉が破られるかわからないぞ。早く行こう。」
 俺はジョージを睨みつけた。こいつは仲間の死をなんとも思っていないのか? 「てめえはっ・・・・・・」
 そこまで言って、俺は気付いた。こいつだって悲しくないはずがない。だが、悲しんでいても先へは進めない。ジョージにはそれがわかっていたのだろう。
「・・・・・・ああ。そうだな。」
 俺は落ち着きを取り戻し、その小さい部屋を見渡した。雑多な部屋に対したものは置かれていないが、とりあえず弾薬と回復アイテムを取り、ハーブを調合する。
 弾薬と回復アイテムを俺とジョージの二つ分に分け、弾倉に残った弾を全て叩き込む。ジョージから受け取った鍵を使い、ボートの鎖をはずした。
「さて、行くか。」
 三人くらいまでなら乗れそうなボートだった。俺たちは空いた隙間を埋めるように座ると、ボートを動かした。

 何かいる。
 そう気付いた時、俺はジョージを引っ張ってボートから飛び降りた。
 ボートはそのまま狭い通路を直進し、ヒルの密集地帯にぶつかる。燃料に引火して爆発・炎上し、ヒルが次々と燃え上がる。
「何か嫌な予感がするぜ・・・・・・」
 サブマシンガンに初弾を装填しながら、俺はつぶやいた。ジョージもすでに起き上がり、マシン・ピストルを構える。
 こういう時の俺の勘はほぼ確実にあたる。案の定、燃え盛る炎の中からとてつもなくでかいヒルがこちらに向かって突進してきた。あのでかさはまさにキング・ヒルだ。
「やばいぞ!」
 俺はサブマシンガンを構えると、フルオートにして引金を引いた。弾丸が連続して発射され、怪物に命中する。
「援護する!先に後退するんだ!」
 ジョージもマシン・ピストルを撃ちながら、じりじりと後退している。だがヒルの動きは速く、あっという間に追いつかれる。
「のわっ!」
 なんだ、いまのは?水中からか!?
 水面下からの攻撃を受け、俺たちは吹き飛ばされた。形勢不利と見た俺はジョージを連れて一時後退し、化物から離れた所で弾倉に残りの弾丸を装填する。
「お前は後何発ある?」
「ここに入っているもので終わりだ・・・・・・」
 ジョージの従には、すでに8発しか入っていなかった。俺は持っていた弾丸を渡すと、牽制のために小刻みに射撃する。
「とても止められそうにねえな・・・・・・」
 怪物が近くに迫った時、サブマシンガンが沈黙した。弾丸を再装填している暇はない。俺はコルト・ガバメントを取り出すと、怪物に狙いを定め、撃つ。
 ドン! ドン! ドン! ドン!
 通路に4発の銃声が響く。これだけの弾丸を喰らってもなお怪物は動きを止めずに向かってくる。
 どうする・・・・・・何か手は・・・・・・
 その時、俺は怪物の頭上に目を止めた。そこにあるのは、高圧の蒸気がぎっしり詰まったバルブ。
 俺が持っている武器はこの銃に装填されている1発の弾丸だけ。はずす事は出来ない。  いいだろう。俺の射撃の腕、見せてやる。
 俺はコルトを構えると、慎重に狙いを定めた。ヒルが真下にきたところを狙い・・・・・・発砲。
 弾丸は見事バルブハンドルに命中した。我ながら冴えた射撃だ。
 高圧の蒸気が噴出し、それをまともに浴びたヒルはそのまま倒れ伏す。やっとくたばったようだ。
 俺が銃を下ろすのを見て、ジョージもスライドが後退したままの銃を下ろす。ヒルはすでに完全に沈黙しており、俺はその上を歩く。
「この水道は何処につながってると思う?」
 俺はジョージに聞いた。
「わからん。だが、そこでも地獄が待っている事だけは確かなようだ。」
 ジョージは顔を引き締めていった。たしかにその通りだが・・・・・・少しは楽観的になれないもんかね。
 まあいい。この先何が待ち受けていようが・・・・・・絶対に生き延びてやるさ。

- FIN -