第三話「ゾンビ」

 殺しても殺しても死なない。
いや死んでいるが動いている。
彼らの体は腐り目は白く濁り血は固まっている。
だが動いている。
それは彼らがゾンビだから…。

 優里は不安だった気持ちが少し薄れた。
学校に近づくにつれ人気が少なくなっていたがちゃんと人はいた。
だがふらふらとおぼつかない足取りでまるで泥酔しているかのようだった。
"朝からお酒なんて…よくないなぁ"
と優里は思いながらまた急いで学校へと向かって走って行った。
学校へ向かいながらまた異変を感じた。
さっきから見かける人がみんな泥酔しているようだった。しかも腐敗臭がしてきた。
もう遅刻確定だった優里は急がなくなり見かけた泥酔しているような人に事情を訊いてみようと思った。
そこにまた一人そんな人に出会った。早速優里は近づいて行きその人の肩をつかんだ。
「あのぉ、お伺いしたい事が…」
と言ったとたん優里は大きな悲鳴を上げた。
優里がつかんだ肩の肉が崩れていったのだ。
よく見るとその人の服は汚れており体は腐っていた。
だがその人はそんな事を気にせず優里のことも無視してどこかへ向かってふらふらと歩き続けた。
驚いて固まっていた優里はしばらくして我にかえった。
その頃には変な人は10メートルくらい進んでいた。
優里はあとを追いかけようとせずそこから逃げるように学校へと走って行った。
直感が告げたのだ。あの人たちは危険だと。
 そのまま優里は一回も止まらず学校へと辿り着いた。
一回も止まらずに走ってきたので優里は息が切れていた。
呼吸を落ち着かせようと優里は門に寄りかかった。
すると"アー"と変なうめき声が聞こえてきた。
驚いて聞こえてきた方向を見るとさっき会ったような変な人がそこにはいた。
だがそこにいたやつはさっき会ったのよりひどく体の所々がなくなっていた。
まだ呼吸が乱れていたが優里はそこから逃げるため走ろうとした。
だが変な人の顔を見て優里は動けなかった。
そいつの顔は崩れていてよくわからない感じだったがその顔は見覚えのある顔だった。
逃げるのをやめた優里はこうつぶやいた。
「大川先生…?」
そこにいたのは優里のクラスの担任の大川先生だった。
優里はショックで動けなかった。
すると突然大川先生だったものの首が消えた。と言うよりバッドで殴られ飛んでいった。
そして飛んでいった首の後ろから一人の少年が現れた。そして少年は叫んだ。
「おいっ山下!何ぼけっとしてんだ早く逃げるぞ!」
名前を呼ばれた優里は我にかえった。
とたんに少年に腕を引かれ校舎の中へと入っていった。
そして二人は三階まで上っていき鍵のついている教室へ入った。
階段を走って上ってきたので二人の息は切れていた。
呼吸が整うまで二人は無言だった。
しばらくして少年の方から口を開いた。
「大丈夫か?怪我はしてないか?」
その問いに対し優里は
「うん、怪我はしてないし大丈夫。それよりさっきはありがとう、亮。」
と言った。
すると亮と呼ばれた少年は少し安心したように笑った。
彼の名前は木村亮。優里の同級生だ。
彼もゲームが好きで優里とはゲーム友達だ。
運動神経はいいがスポーツは何もやっていない。
その分頭はいい。面白い性格でかっこいいため学校ではモテる方だ。
優里と亮はよく遊んでいるためつきあっていると言う噂がある。
だが二人にはそんな気持ちは全くない。ただのゲーム友達として遊んでいる。
いつもなら二人は会うとゲームの話題で話しを始めるが今はそんな場合ではないようだ。
優里はさっきからわからない事だらけでまともな人がいたら色々訊いてみようと思っていた。
だから優里は亮に訊いた。
「ねぇ、今日町の様子がなんかおかしいよね。亮は何か知っている?知っていたら教えて。」
すると亮はこう答えた。
「俺もよくわかんないんだよ。朝起きたときにはもうこの有様だったしな。」
「えっ、どういう事?」
「俺が最初にゾンビを見たのは家でだ。」
「ゾンビ?ゾンビって何?」
「あぁ、ゴメンゴメン。あいつらの事だよ。山下もさっき遭っただろ。」
優里は黙ってうなずいた。
「あいつらって何か映画とかゲームででてくるようなゾンビみたいじゃん。だから俺はゾンビって呼ぶ事にしたんだ。呼び名があった方がわかりやすいだろ。」
「確かに似ているかも。その呼び名あってるかも。」
「だろ?そんで話し戻すけど俺が最初にゾンビを見たのは家でだ。ちなみに遭ったのも家でだ。朝起きて家の外で変なうめき声が聞こえたんだよ。何だろって思ってカーテン開けて窓から外見てみたんだ。そしたらゾンビが二、三体道路を歩いてんだよ。最初は酒飲んで酔っぱらっている連中だと思った。だから気にせず着替えてたんだ。そしたら今度は下の階から悲鳴が聞こえてきたんだ。その悲鳴は母さんのだった。驚いて下におりていったら喰われてたんだ。母さんがゾンビたちに…。」
優里は驚いて手で口を塞いでいた。
すると優里は亮の異変に気づいた。
亮は話すのをやめて顔をうつむかせていた。
その顔はとても悲しそうな顔をしていた。
「亮、大丈夫?」
と優里が声をかけた。 声をかけられた亮は急いで顔を上げ笑ってみせた。
だが悲しみは隠しきれておらず明らかにつくり笑顔だった。
「ゴメンな。途中で話し止めちゃって。」
「いいんだよ。こっちこそ嫌な事思い出させちゃってゴメンね。」
「いや、山下は悪くないよ。」
「それでお母さんはどうなったの?」
優里は恐る恐る訊いた。
「死んだよ。首を噛み切られていたからね。でも俺は喰われている母さんを助けようとして階段の横にあったこのバッドでゾンビたちを殺したんだ。結局助からなかったけどね。そのまま家は狭くて集団でこられたらヤバいと思って学校に来たんだ。予想はしてたけどやっぱゾンビはいたね。思ってたより少なかったけど。学校の中はある程度掃除しておいたけどまだいるから気をつけてね。」
「うん、わかった。」
亮の話しが終わったあとしばらく沈黙がながれた。先に沈黙を破ったのは優里だった。
「ところであのゾンビたちって何なの?生きているようには見えないけど。」
「俺もよくわからないが死んでいると思う。」
と亮は何かを思い出したかのように話しを続けた。
「そうだ、ゾンビについて優里に話しておく事がある。よく聞いて忘れないでくれ。」
優里はうなずいた。
「あいつらは俺たちを食べようとする。だからあいつらを見かけたら近づいちゃいけない。喰い殺されておしまいだ。あいつらを見かけたら選択肢は二つ。逃げるか殺すかだ。そこで殺すを選んだ場合注意事項がある。それは頭を狙う事だ。普通の人間を殺すように心臓狙ったりとか体を傷つけても意味はない。あいつらの弱点は頭だ。なんで頭が弱点だか知らないがとにかく攻撃は頭にしろ。そうすればあいつらは死ぬ。」
「どんな風に攻撃すればいいの?」
「バッドで殴るとか腐っているから何かをさしても簡単に殺せるぞ。首の骨を折るのも効果ありだ。」
「でもそれって近づかなきゃだから…」
「そうなんだよ。だから飛び道具があればなぁ。」
その言葉に優里は突然何かを思い出しバッグの中を探した。
そして目的の物が見つかるとそれを亮に見せながら言った。
「拳銃ならあるよ。」
その言葉に亮は驚いた。
優里の手にはしっかりと銃が握りしめられていた。
だがしばらくして亮が言った。
「おもちゃじゃ意味ないぜ。本物じゃないと。」
亮は信じていなかった。
なんせ日本では銃の所持は許可が必要だからだ。
優里みたいな子供に許可を出すはずがない、そう思っていた。
だが優里は
「違うよ!本物だって。おもちゃなんかじゃないよ!」
と大声で言った。
あまりに大きな声で言うので亮は優里が冗談を言ってる訳ではなくまじめに言っているのだと理解した。
だがまだ半信半疑の亮は黙って優里に手を伸ばした。
その手に優里は黙って銃を渡した。
とたんに亮の顔が驚きの表情に変わる。
優里が銃を持ったときと同じ反応だった。
そして亮は黙って優里に銃を返した。そして言った。
「さっきは悪かったな。確かに本物らしいな。」
亮がこういうと優里は信じてもらえたのがうれしく笑った。
しかしその笑顔はすぐに消えた。教室の外からゾンビのうめき声が聞こえてきた。 すると亮が
「銃でもゾンビは殺せるか試してみるか。」
「えっ、でも使い方わかるの?」
「わからないけど勘でやってみるしかないだろ。」
「そんないい加減な…。危ないよ。」
「大丈夫。銃についての知識は多少あるから。」
と言っている間にドアがたたかれ始めた。
「ヤバいな。突破されたら隠れる場所を変えなきゃな。」
教室のドアは壊れやすいので心配だった。
すると案の定、ドアが倒されゾンビたちが侵入してきた。侵入してきたのは三体。
「どうしよう。きちゃったよ。」
優里がそう言ったとたん亮はもう銃を撃ち始めた。
だが所詮初心者が撃つ弾だ。狙いが外れ一体も倒せない。
やっと先頭のやつの頭に命中して倒せた。
だがもう二体はすぐ近くまで迫っていた。
だが当たらない。
かなり接近され当たりやすくなり二体目も倒せた。
だがあと一体というときなんと弾が切れてしまった。
マガジンを変えている余裕などない。
亮が喰われるっと思ったとき突然優里が亮の前にきて亮をかばった。

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