第六話『目覚める力』
(和希)『諦めちゃだめだ。』
そう言い、再び銃の構える。しかし肩の傷が急に痛み出し、膝をついてしまう。
(和希)『うぅ・・・』
状況は悪化し、和希はとうとう気を失ってしまった。
(満月)『和希君!』
呼んでも返事をしない。
(満月)『今回ばっかりはもうだめだよ・・・。』
もう【ゾンビ】は満月の目前にいた。
(満月)『噛まれる。』
そう思ったとき、不思議なことが起きた。
何故だかわからない。
【ゾンビ】は満月を無視して。和希のほうへ向かう。自分が狙われない理由は、どうでもよかった。今の満月には和希を助けることしか考えられなかった。
無意識に満月は銃を構え、撃つ。一発も外さず。
しかしゾンビの数のほうが多いため、一人じゃ間に合わない。しかも頭痛までしてきた。
(満月)『間に合わない。お願い、止まって!』
と思ったとき。なぜか【ゾンビ】の動きが止まった。よく見ると止まったというよりは、何かすごい力に抑え付けられているように見える。
(満月)『えっ!?どうして・・・とにかく今は!』
今度は首が折れろ、と強く意識して集中してみる。
すると満月の念じた通り、【ゾンビ】の首は次々に圧し折れて行く。
そのあと何かわからない疲れが満月を襲う。
おまけに頭痛も凄まじい。近くの壁にもたれ掛かり、座る。
(満月)『今のは一体?』
自分でもよくわからない状況に混乱する。
(満月)『とに・・かく助かって・・よかっ・・・』
あまりの疲れに満月も気を失ってしまった。
(満月)『う、う〜ん。』
気がつくと、そこは保健室だった。
(ウィルソン)『やっと目が覚めたか。』
ウィルソンが保健室に来るまでのことを話した。倒れている二人を発見して、ここまで連れて来たのは言うまでもない。
連れて来られてから1時間くらい寝ていたみたいだ。あれからは誰も見つかっていない。
そしてまだ和希は目覚めていない。かなり疲れが溜まっていたみたいで発見したときは、相当、顔色が悪かったらしい。今は少しよくなっている。
(航希)『あんなにたくさんの【ゾンビ】一体どうやって倒したんですか?』
(満月)『よく覚えてないの。途中までしか・・・。』
覚えているのは、和希が倒れるまでだった。その後だ。覚えていないのは。
(クララ)『思い出すまでそっとしておきましょう。』
思い出せないことに疑問を持ちながら、ふと鏡に目をやる。
(満月)『!?』
鏡に映っている自分の瞳が真っ赤になっている。驚いた途端、また頭痛が襲う。
(満月)『あ、頭が、い、痛い。』
それと同時に【ゾンビ】に囲まれたときのことが、細々と脳裏を過ぎる。
満月は別の視点から、自分を見ていた。
(満月)『これが、私?』
そこには頭を抑えて、立っている、瞳の赤い自分が立っていた。
(満月)『ここは確か・・・頭痛が始まったときだ。』
今になってわかる。あの時【ゾンビ】を抑え付けたのは自分だ。
そう確信したのは、思い出に映っている、自分の周りの空間が歪んでいたからだ。
あの時は夢中でわからなかったが、自分の中で何かが変わりつつある。そう思った。
そして我に返る。なんとなく集中して腕を見る。何故だかわかる。そして見える。自分の血液の中に、ウイルスが入っているのが。
しかもそのウイルスは満月の細胞一つ一つに結合しているのがわかる。
(満月)『力の原因はウイルスか。』
今度は和希に目をやる。和希も満月と同じようなことが起こっている。確認するために、目に意識する。
やはり、和希の瞳も赤くなっている。
(満月)『ゾンビ化の心配はないな。みんなは大丈夫かな?』
一通り見てみたが、まだ大丈夫だ。
(満月)『よかった・・・まただ。頭が痛い。力を使いすぎるとダメだな。もう少し休んでおこう。』
そう思って、また目を瞑る。