第一話『迫り来る恐怖』
次の日、目覚めるともうお昼時だった。和希は一人暮らしだから寝坊すると起こしてくれる人がいない。寝坊をする事は多々あったが大抵1〜2時間程度の寝坊であった。ここまでの寝坊は初めてだ。和希は急いで支度をして家を出て行った。
大学まで走っているとあることに気がついた。
(和希)『誰もいない。静かだ・・・。静か過ぎる。』
しかし今は大学に急がなければならない。不気味だったが急ぎに急ぎ、大学に着いた。
いつもと変わらない学校のはずだったが、異常に静かだ。お昼時でみんながワイワイ喋りながら食堂に向かっている時刻なはずだ。
(和希)『おかしい。』
和希がそう思いながら校舎に向かっていると一人、男がいた。
『おーい、キミも遅刻したのかい?』
そう言って近づこうとした時、男は振り返った。振り返った男を見て、和希は自分の目を疑った。
振り返った男は顔の所々が腐っていて、左右の足の肉が何者かによって引き裂かれていて骨がむき出しになり、死んでいてもおかしくないほどの出血をしている。
和希は気持ち悪いと思いながらも少し近づき。話しかけた。
『だいじょう・・ぶ?』
そう言った。しかし男の目は白く濁っている。和希は走り去ろうと思った。しかし目を見た恐怖で足が動かない。
(和希)『動けっ!』
そう心の中で叫んだ。しかし足は動かない。死者の目をした男は歩くのがやっとのような足取りでゆっくり近づいてくる。
ウゥゥゥゥ
と気味の悪い唸り声を上げながら。死者はとうとう目の前まで迫り、和希を掴み、和希の左肩に噛み付いた。
『うわぁぁぁっ』
和希の体は痛みで動くようになった。まずは死者を振りほどき、それから校舎に逃げた。
校舎の中は地獄と化していた。
(和希)『いったい何なんだ。どうしたらこんなことに。』
校舎には所々、血が飛び散っていた。校舎を当てもなく歩いていると、噛まれた場所が痛み出した。立ち止まって考えた。今するべき事を。
(和希)『とにかく止血しなければ、さっきから噛まれたところの血が止まらない。保健室に行こう。』
痛む傷口を押さえながら和希は保健室に向かった。
保健室までの道のりには誰もいなかった。保健室の鍵が開いていた。扉を開け、中に入ると泣き声が聞こえた。恐る恐る泣き声の聞こえる方に行くとそこにいたのは満月だった。
(和希)『満月ちゃん。生きていたのか。』
向こうもこっちに気づいた様だ。
(満月)『和希君も生きていたのね。』
そう言って満月ちゃんはオレに歩み寄ってきた。
(満月)『肩から血が。』
(和希)『死者に噛まれてしまったんだ。』
手当てをしながら、オレは午前中に何があったのか聞いた。
奴が現れたのは大体、朝、登校してから2時間後ぐらいだった。あの狂った事件で死んだと思われた人々が町の病院で生き返って手当たり次第に近くにいる人に噛み付くと言う通報が入った。
警察は町の病院を包囲したが死者には勝てず包囲網を突破され、次々に死者が増えていった。さらに死者に噛まれ、死んだ死者も時間が経つと蘇生して生きている人を探して町を彷徨い歩いた。
奴らは【ゾンビ】と呼ばれた。話からすると町の人々を変えたのは新種の【ウイルス】だろう。奴らは大群で押し寄せて学校に入り込み校内を壊滅状態に追いやった。校内のみならず、町全体を壊滅させたのだった。
道理で町が静かなわけだ。ここまで来れたのが奇跡に近い。そう思った。あの時、外に逃げていたら、ゾンビに囲まれ死んでいただろう。
満月ちゃんがここにいたのは、たまたま、ここの前を通り、ここが安全だとわかったから中にこもったらしい。
そして今に至るわけだった。満月ちゃんに聞くと傷は負わされていない。彼女は感染の心配はない。ただ空気感染の場合は生きている人全員アウトだろう。
オレは手当てを終え、どうするべきか考えた。さっき噛まれてしまった以上もたもたしてはいられない。あいつらの仲間になるのはゴメンだ。
(和希)『とにかく治療法があるはずだ。それを探そう。』
そう思い、まずは治療法を探すため、満月ちゃんを守りつつ奴らと戦えるような物を探さなければならない。
(和希)『満月ちゃん。一人は危険だ。今から一緒に行動するよ?』
(満月)『うん、でも私、疲れちゃったし、和希君も傷ついてるし、休んでからでもいい?』
無理もない。一人で地獄の中を生きていたのだから。ここは保健室だしベッドもある。オレ達は休むことにした。少しすると泣き疲れたのか、満月ちゃんは眠っていた。
(和希)『キミはオレが命に代えても守る。』
和希は誓った。和希は見張りをしていたが、さっきのダメージの疲れに負けてうとうとしていた。
そして気がつくと和希も眠ってしまった・・・。