第1章 アレックス編

〜サウスパークシティ中心部 ホテル「パール」1階ロビー〜

この街最大のホテル「パール」では混雑が出来ていた。
政治家や有名人、金持ちなどが主に宿泊しており中にはハリウッドスターまでもがこの街に来た際にホテル「パール」を必ず利用する。
ホテルのロビーではウェイターと客が行き交いカウンターでは部屋の予約をする列が連なりそれを済ませた客はロビーにあるソファーで寛いでいた。
そのロビーの公衆電話で1人の男が受話器を片手に笑みを浮かべながら話をしていた。
彼が着ているウインドブレーカーの背中に描かれたアルファベットを見ると彼は派遣警備会社の警備員らしい。

「え〜ほんとかよ。あいつフラれたのか?」
『そうよアレックス。彼、昨日彼女とレストランに行ったらしいんだけど酒を飲んでもうべろべろに酔ちゃって・・・そこで彼、よった勢いで彼女に対する不満を言いまくったらしくて・・・・・』
「へ〜アイツ酒飲めなかったんじゃなかったけ?」

男は口元を緩ませながら再び笑う男の名前はアレックス・マクレシス。
ホテル「パール」の警備を任されている派遣警備員で現在付き合っている女性がいて今、電話で話し合っているのがそうである。

「で、仕事のほうはうまくいってるの?」

とたんに電話相手の彼女は話題を変えてくる。

「う〜ん。一応、うまくいってるけど暇だね。警備してるんだから多少のトラブルがあってもいいんだけど」
「平和が一番よアレックス」

微笑しながら彼女はアレックスに話かける。
ふと、アレックスは受話器を耳に近づけながらフロントで受付をする男性の後ろで固まる集団に目を向け不振に思い始める。

「ごめん。仕事があるからおしゃべりはここまで」
「うん、わかったわ。じゃあね」

プツリと電話は切れアレックスは受話器を戻すと不振な黒人少年が固まる集団にゆっくりと近づこうと足を踏み出した瞬間、集団の中にいた少年の1人がM11A1イングラムを取り出しフロントで受付を行っていた男の肩を掴み少年のほうに向かせると何かを叫びまわりの人がその異常に気づくと他の少年たちが懐から銃を取り出しまわりに向け始め悲鳴と叫び声が飛び交う。
アレックスはすぐさま身をかがめロビーにあったソファーの影に隠れ腰のホルスターからグロック17を取り出した。
フロントにいた受付のウェイターは銃を突きつけながらもカウンターの下にあった通報装置のボタンにゆっくりと手を伸ばし押した。
この瞬間から市内の警察署に異常を知らせこのホテルに警察が到着するまで数分と掛からないだろう。
アレックスはソファーの陰から顔を出して様子を伺い相手の集団が何者かを考え始める。
彼らが持っている銃はどこでも安くて手に入るもので彼らはどうやら捉えている男から現金をせしめるらしい。
すぐさま頭の中でギャングという言葉が思い浮かびグロック17を握り締める。
褐色の肌を持った少年たちは男から財布とアタッシュケースを奪うとそのグループの中心にいた少年の言葉と共にその場から逃げようとしていた。

(逃がすかよ!)

アレックスは彼らが人質から離れたのを頃合に体を乗り出しギャング集団の1人に向け発砲した。
放った弾丸は彼らには当たらずそばにあった植木に命中し銃声が聞こえた方向に首を向けた彼らは銃を握り締めてこちらを見ているアレックスを確認すると彼らが持っている銃が火を噴いた。
アレックスは咄嗟に体を屈めソファーに隠れるがギャング集団からの集中砲火を受ける。
連続して響く銃声がホテルにいた客たちをパニックに落としいれる。
銃声が止み彼らが攻撃をやめた瞬間、アレックスは再び体を乗り出し逃走しようとしているギャング集団に向けトリガーを引き続ける。
放たれる9mm弾はアレックスが狙っていた通りには成らず床で弾けたり壁にめり込んだだけでありそのまま彼らは自動ドアを潜り抜け外に出た。
アレックスはすぐさまソファーを乗り越え走りながら彼らの後を追い自動ドアを超え外に出た。
だが、外に出てアレックスを迎えたのは警官たちが向ける銃口でその横で先ほどの少年たちが両手を挙げている。

『すぐに銃を捨てて両手を挙げなさい!!』

パトカーのそばでスピーカーを持ってアレックスに呼びかける警官。

「あれ?」

アレックスは疑問符を浮かべながらグロック17を手放し床に捨てるとそのまま両手を挙げた。

ホテルでの騒動を聞きつけ付近を巡回していたパトカーがホテルに集まり事件は解決された。アレックスは事情を説明し銃は回収されたもの手錠はかけられずパトカーに載せられていた。
ホテルを襲った少年たちは次々に手錠を掛けられパトカーに乗せられている。
パトカーのボンネットにもたれかかっているアレックスの前に1人の警官が現れ彼に話しかけてきた。

「ジミー・ロセフト巡査です。これから事情徴収と取調べのため本署に送還します。まあ、警備員としての責務を果たしただけなので今夜中には釈放されるでしょう」
「そりゃどうも」

アレックスはジミーと言う警官にパトカーの助手席に座らされジミーは運転席側に乗り込むとエンジンをかけた。
後方座席には腕を後ろに回され手錠を掛けられている少年が何とかして腕を前へと戻そうとしているのをバックミラーで確認していたジミーが口を開ける。

「下手に動かすと怪我するぞ」
「うるせえ!これキツイんだよ!」

ふうと呆れたジミーは後方を無視しエンジンをかけた。
パトカーのエンジンは音を立て動き出しジミーはサイレンを鳴らしながらアクセルを踏みスピードを上げながらホテルを離れた。
ホテルを離れたパトカーは市内の中心部にある警察署に向かうため制限速度よりやや超える程度のスピードで走行しながら都心の道路を走り抜ける。
しばらくするとパトカーはサイレンを止め普通に走行する。
これは周りの人に不快感を与えないためで巡回しているパトカーを演じるためのジミーの計らいだった。
交差点の赤信号に差し掛かったジミーの運転するパトカーはゆっくりとスピードを落とし白線の手前で停車するとバックミラーで送還中の少年の様子を伺いジミーはアレックスに話しかける。

「そういえば貴方の名前を聞いてませんでしたね」

アレックスは突然のジミーの声に戸惑いながらも素直に彼に自分の名前を言った。

「アレックス・マクレイスです」

そういうとアレックスは手を差し伸べジミーはハンドルを左手で握りながら右手で握手を交わす。
すると信号は赤から青に変わりパトカーは再び警察署へと向かうため走り出す。
走り出してからもジミーはアレックスに話しかけアレックスはそれに答えていく。
ふと、アレックスはパトカーとは反対車線を走るトラックに目を向けそのトラックが何かを確認する。
トラックの荷台には迷彩服を着た兵士たちがライフルを持っており今回の暴動鎮圧のために派遣された州軍兵士だろう。さながらも戦場のような雰囲気を漂わせる。
いつの間にか横目で軍用トラックを確認していたジミーはハンドルを握り運転に集中するがアレックスはトラックを最後まで見届けると呟いた。

「最近、暴動騒ぎで州軍が頻繁に街を巡回してますね」
「ああ・・・おかげで署内では変な噂が立って困っていますよ」
「変な噂?」

アレックスは首を傾ける。

「ええ、何でも暴徒の正体は死なない化けだとか・・・暴動を鎮圧に行った仲間たちが噂してるんですけどね」

ジミーは苦笑しながら語り話を続ける。

「もっとも化け物だなんて存在するわけないしこんな噂すぐに収まりますよ」

ハハハ、と笑いながら運転をするジミーに対してアレックスを微笑する。
彼にとってはそんな噂はどうでも良かったのだが不意に化け物と言う言葉がアレックスの頭に残る。

(なんだ、この不安・・・・)

顔をゆがめながらアレックスはジミーが言った言葉を振り払う。
それと同時にパトカーに備え付けられた通信機から電子音が鳴り本署からの通信を受け取ると音声になってパトカー内にいる人物に知らせる。

『28番通りで暴徒による集団殺人発生!付近のパトカーはすぐに急行してください!』

通信が終わり車内で沈黙が続いた後、パトカーは反対車線に周りジミーはサイレンを鳴らしながらスピードを上げる。

「悪い。少し遅くなるわ」

ジミーの声にアレックスはため息をついた。
パトカーは現場に急行すべくスピードを上げアレックスに不安を与え後ろのほうでなにやら少年が騒いでいる。

「おい!どこ行くんだよ!おい!」

ジミーは後ろの少年には答えず運転に集中した。
しばらくするとパトカーは交差点が見える20m手前で停車しジミーはしばらく様子を伺っていた。
目の前の交差点の中心でパトカーが数台停車しておりそのそばで警官が銃を発砲していた。
何が起きているのか分からない不安と好奇心に狩られたアレックスはじっと先にいる警官たちを見つめる。
ジミーの額に一筋の汗が流れジミーはビニール袋に入ったアレックスの銃、グロック17を座席の下から取り出すとアレックスに手渡した。

「署の人には黙っててくださいね。援護しに行きますから貴方はここで待っててください」

そういうとジミーはホルスターからハンドガン SIG P226を取り出しスライドを引くとドアを開け警官たちがいるところまで走っていった。
ジミーは生暖かい風を感じながら警官たちのほうへと走り寄るとパトカーの陰に隠れてマガジンを交換しようとしていた警官のそばで同じようにしゃがみこむとその警官に話しかけた。

「なにがあった!?」
「や、やつらにやられた!すごい数で仲間も4人やられている!」

そういうと警官はパトカーから身を乗り出し銃を発砲する。
ジミーも同じくパトカーから身を乗り出し目の前に向けSIG P226を構えるが目の前に広がる光景にジミーは驚き立ち尽くした。

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