第1章 トム編

〜1999年 2月29日 サウスパークシティ住宅街 AM7:23〜

ほのかな住宅街。
電灯が並ぶ通りで1人、イヤホンを耳にしてガムを噛んでいる少年がいた。
彼の名前はトム・ジェンバルトン。サウスパーク高校に通う18歳である。
今日は友人と一緒に学校に通学するため自分の家の前の歩道で待っているのだ。
繰り返し聞いている音楽に飽きたのか音楽機器の電源を落としイヤホンをとると右肩に背負っているバックの中に機器をしまう。
すると遠くからバイクのエンジン音が聞こえ通りの向こうから規定範囲内で走行しているバイクを発見しトムは笑みを浮かべる。
バイクはトムの立っている前で停車するとフルフェイスヘルメットを被っている運転手はヘルメットを取るとその素顔を現す。
顔立ちから見てアジア系だがどこか雰囲気的にサムライがいる国の日本人だと分かる。
トムは腕にはめた時計を見ると呆れた表情をしながら口を開けた。

「3分遅刻だリョウ」
「ごめんごめん。バイクの鍵が見つからなくてさ〜」

トムが親しげに話しているリョウ・ニシダと言う日本人だった。
3年前に貿易商をしている父親と共にこの街に来て暮らしている留学生だ。
当の父親は仕事でほとんど家を留守にしておりほとんど1人暮らしの状態である。
リョウは手に持っている予備のヘルメットをトムに渡すと親指を立てて後ろに向け乗れと合図をする。
ヘルメットを被ったトムはリュウが乗っているバイクの座席の残ったスペースに跨るとリョウの肩を叩いて合図をしリョウはハンドルを捻りバイクは動き出す。
2人の乗ったバイクは住宅街の通りを走りぬけ風を切る。
トムはバイクを運転しているリュウに対して質問を投げかける。

「そういえばどうしてこんな朝早くに登校すると言ってきたんだ?」

トムは昨日の夜、リョウから受け取ったメールに疑問を持っていた。
一緒に登校するのはほぼ毎日のことだが指定された時間帯がいつもより早い。
トムが住んでいる場所からだと学校まで20分たらずで行ける距離なのだが今回指定された時間帯だと時間に余裕過ぎて軽く近くの店まで行って買い物が出来る。
リョウはヘルメットを被った状態で顎を使ってスピードメーターを指して言った。

「ガソリンがほとんどないんだ。カールさんのところに寄ってガソリン入れてくる」
「あ〜なるほど・・・」

答えを知ったトムは単純な理由に肩を落とす。
話している間にも2人の乗ったバイクは住宅街の通りを抜け小さなビルが立ち並ぶ通りに差し掛かり交差点に入ろうとした瞬間、赤信号になり停車する。
停車していると遠くからパトカーのサイレン音が聞こえ目の前をパトカーが走りぬけリョウの表情が険しくなる。

「最近、パトカーの通り多いよな」
「仕方ないさ。事件多いし暴動起きちゃったし」
「まあ、俺は護身用に‘ある’もの持ってきてるけど」
「‘ある’もの?」
「学校に行ったら教えてやるよ」

トムが言い終わると同時に目の前の信号が青になりバイクは再び走り出す。
交差点を通り走る車を避け道路の端を走行し続けオフィスビルが立ち並ぶ通りの一角にガソリンスタンドが見えたリュウは少しずつ減速しガソリンスタンドの中へと入って行きガソリンの給油機の前に停車するとエンジンを切りバイクから降りると店内から1人の中年男性が出てくるとリュウは中年男性に声をかけた。

「おはよカールおじさん」
「おはよ、リョウにトム。給油かい?」
「うん。もうカラカラだよ」

中年男性は給油機に取り付けられている給油ホースに手をかけリョウは燃料タンクの蓋を開ける。

「俺、ちょっと飲み物かって来るわ」
「ああ、わかった」

リョウたちが給油している間、トムはいつも暇になるので必ず店内にある自販機で飲むものを買う。
トムは歩きながら店に向かい新品のタイヤが並ぶ店のショウウインドを見ながらドアの前に立ちセンサーが反応しドアが開く。
店の中に入ると缶に入ったオイルが積み上げられている先にある自販機に目をやると自販機まで歩きながらポケットの中に入っている小銭を探り自販機の前に立つ。
探り当てた小銭を自販機の小銭投入口に入れ各飲み物のボタンが赤く光るとレプリカのコーラ缶が置かれたプラスチックガラスの手前にあるボタンを押す。
機械の動作音が聞こえた後、投出口からコーラ缶がでて来ると体を屈め投出口に手をいれるコーラ缶を掴む。
コーラ缶を掴んだトムは体を戻し指で蓋を開け口に持っていくと一口だけ飲んで外を眺めた。
外ではこのガソリンスタンドの店長であるカール・ハイドとリョウが給油作業をしながら雑談をしている。
2人の雑談を見ていても仕方ないのでトムは店内に設置されたテレビに目をむけ今流れているニュースをコーラを飲みながら見ることにする。

『・・・で多数の死者が出た模様。警官隊も必死に鎮圧を行っていますが規模はますます拡大している模様です。付近の方々は十分お気をつけください』

ニュース画面に右端に暴動が起きている場所がマップとして表示されトムの表情が険しくなる。

「ゲッ、結構近いじゃん」

そう呟きながらコーラを一気に飲み干すと缶を手で握りつぶしゴミ箱に投げた。
缶は見事にゴミ箱の中に入ると親指を立ててゴミ箱に向けながら店を出た。
給油機の前にいた2人の様子を見てみるとすでに給油が終わった様子でリョウはヘルメットを手に取っていた。

「行こうか」
「ああ」

トムはリョウからヘルメットを受け取るとそれを被りリュウの後ろの座席に跨りリョウはカールにお礼を言うとエンジンをかけてハンドルを捻った。
エンジン音を鳴らしながら2人の乗ったバイクはそのまま彼らが通うサウスパーク高校へと向かった。

〜AM8:19 サウスパーク高校前〜

1台の黒い車からヒップホップ系の音楽が流れ大きな音が流れそれは周囲に聞こえるぐらいの大音量で人々の目をひきつけた。
その車の中から黒人男性と少女が出てくると男は少女に対してハグをすると体を離し歩きながら車のドアノブに手をかけて少女に言った。

「マーシャ。迎えに来てほしいときはちゃんと連絡しろよ」
「わかったわ兄さん。心配しないで」

この学校の生徒である少女のマーシャ・ダリアルスは兄であるラリー・ダリアルスに告げるとラリーは車に乗り込み運転席から彼女に手を振ると走り去っていった。
マーシャはため息をつきながら校門をくぐろうとした瞬間何者かに飛びつかれる。

「おはよ。相変わらずお兄さんの送迎?」
「もう、うんざり。たまには1人で行きたいわ」

彼女に飛びついてきた人物、ローズ・アルフェルノは笑みを浮かべて話しかけるのに対してマーシャは呆れ顔だった。
2人はそのまま雑談をしながら校舎の中へと入って行きしばらくすると2人乗りのバイクが校舎に入ってくるとそのまま校内にある駐車場まで行きバイク専用駐車スペースで止まり2人はバイクから降りるとヘルメットを脱いだ。

「ついた」
「今日もだるい授業の始まりだぜ」
「・・・授業がダルイのは世界共通なのかな?」

なんだかんだお互いに話しながら彼らは駐車スペースを抜け校舎の中へと入っていった。
中に入るとロッカーが置かれた場所に立ち止まりロッカーから教科書と筆箱を取り自分の教室へと向かう。
朝のこの時間帯は生徒たちで廊下は混雑し誰もが自分の教室に向かったりしている。
トムとリョウは自分のクラスである3−Cに向かいながらまだ少し時間があるので道中にある自動販売機でジュースとスナック菓子などを購入することにする。
お目当ての自販機が目に付くとトムとリョウは小銭を自販機に投入しコーラとスナック類のお菓子を2袋購入する。
鞄を背負い教科書を持った状態で買ったスナック菓子とコーラを手にうまく安定させながら自分の教室の中へと入り机の上に鞄とスナック菓子等を置く。
椅子に座りトムたちのクラスを担当している先生、ブライアン・ハワードの到着を待つ間2人はスナック菓子を食べコーラを飲んでいた。
時刻はすでに8:30。普段なら到着していいはずの先生がまだ来ない。
無論、先生が来ない教室内で行われいた生徒たちの雑談はさらにヒートアップし担任の行方や今の話題で盛り上がった。

「先生遅いな・・・」
「どっかで事故ってるんじゃない?」
「かもな〜」

冗談を言い始めたリョウにトムは苦笑いで返す。
日本人が言うとトムの場合冗談には聞こえないらしい。
すると教室に2人の少女が不機嫌そうな顔をしながら入ってくると最後尾の机を陣取っていたトムたちの2つ横の席に座ったのを見たトムが彼女たちに話しかけた。

「なんだ?朝から不機嫌そうなどうしたんだマーシャ」
「廊下が混雑していたなかなか教室にこれなかったの」
「あ〜なるほど・・・」

トムはクラスメートであるマーシャ・ダリアルスの返答を聞いて納得するとスナック菓子を頬張る。
マーシャの友人であるローズ・アルフェルノが担任であるハワード先生がいないのに気づくとすかさず一番近いトムではなくその横にいるリョウに声をかけた。

「リョウ、先生まだ来てないの?」
「そうみたいだね。まあ、そのうち来るよ」

トムを挟んで親密になっている2人を見ていたトムとマーシャは同時に声を出すがマーシャは会話の権利をトムに譲るとトムは言いかけた話を続ける。

「そ、そういえば俺今面白いもの持ってきてるぜ」

「面白いもの?」

トムの面白いものに反応したリョウが聞き返すとロッカーに置いてこずのトムの鞄を机に置くとトムは鞄の中に手を突っ込みその‘面白いもの’を取り出しその場にいた3人の表情が凍りつく。
トムが鞄から取り出したものはM92Fベレッタ ハンドガンだった。
9mm弾を使用するもので人間相手なら殺傷能力は十分である。
マーシャがトムの頭を叩くとリョウが急いでトムの鞄の中にM92Fベレッタをしまう。

「ちょっと!何で学校に銃持ってきてるの!?」
「落ち着けって。今暴動とか分けの分からない事件が起きてるだろ?護身用だよ護身用」
「護身用って・・・」

マーシャとのやり取りを見ていたリョウが呆れたようにトムを見る。その時だった。
トムたちがいる席より前の席から悲鳴が聞こえ4人は顔を悲鳴が聞こえた方向へと向ける。
そこには体を痙攣させながら倒れているクラスメイトがいた。
そのそばでそのクラスメイトの友人が先生を呼びようにと叫び1人のクラスメイトが職員室へとダッシュで向かう。
倒れたクラスメートの容態が気になった4人は倒れたクラスメートの周りに出来た人だまりが出来た円の外へから倒れたクラスメートの様子を見る。
先ほどまで痙攣していたクラスメートだが今は微動出せずぐったりとしていた。
その近くでクラスメートの友人が肩を揺さぶりながら声をかけ続ける。
呼びかけに答えることもなくぐったりとしたクラスメートの表情は徐々に青白くなりクラス全体の空気が重くなる。
すると突如、倒れていたクラスメートが目を覚まし肩を揺さぶっていた友人を見つめ肩にかけていた手に噛み付いた。
噛まれた男子生徒は痛みからなる叫びを上げ円をなして取り囲んでいた男子生徒は驚き女子生徒は悲鳴を上げ後ろへと下がる。
噛み付いた男子生徒は噛み付かれた男子生徒を押し倒し馬乗りになると今度は首元に噛ついた。
血が床に飛び散りそれを見ていた勇気な男子生徒達が噛み付いた男子生徒を引き離し抑える。
噛み付かれた男子生徒は噛まれた首筋を押さえながら荒い息をしておりそこに先ほど先生を呼びに行った生徒と体育担当の先生が駆け血を流しながら倒れている生徒を見つけ駆け寄り先生を呼びに行った生徒はさっきまで倒れていた生徒が入れ替わっているのを見て疑問符を浮かべる。
トムとリョウはその様子をただ見ていることしか出来なかった。

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