第3章
〜19:35 1F西側通路〜
ヘンリー率いるB小隊は西側通路に入ると同時に異様な臭気に鼻を押さえていた。
そして、床にこびり付いた乾いた血痕は通路をたどる様に奥の扉へと伸びていた。
ヘンリーは血痕がついた床の前にしゃがみ込むとしばらく観察すると口を開けて言った。
「3人ここに残って待機しろ。調査班にこの血痕を調べさせるんだ」
言われたとおりケインとマイク、合わせて15人いる中の3人がその場で待機しB小隊はそのまま通路の先にある扉の前で立ち止まる。
1人の隊員がドアノブに手をかけると仲間に合図し一気にドアを開ける。
開いたドアの中に数人の隊員が入り込むとその広い空間にM4A1を辺りに向けると銃を下ろした。
残りのメンバーが部屋の中に入り込むとケインはその部屋が何に使われていたのか理解した。
立て並ぶ本棚に収納された本や資料、そして机の上に広げられた用紙やレポートその前に置かれたホワイトボードにはなにやら遺伝子の組み換え構造図が張られている。
どうやらここは図書室か資料室の類だろう。
ヘンリーは机のそばにあった椅子に腰掛けると机の上に置いてあった資料に目を通し始める。
パラパラとページをめくるが飽きたのか机に放り投げた。
他の隊員は各々部屋の中を調べ始めケインは床に落ちていた一冊のノートを拾い上げると表紙を見た。
本のタイトルには「ジョセフ・パーク」と書かれどうやらこれはジョセフと呼ばれるものの日記のようだ。
ケインはその日記に目を通し始めた。
〜ジョセフ・パークの日記〜
1月13日
今日、ヨーロッパの支社からGウイルスのサンプルが届いた。
貴重なサンプルなのでとりあえず保管庫に保存し明日から始まる研究に使ってみたいと思う。
もし研究が成功すればより強力な兵器の開発が出来る。
1月18日
Gウイルスのサンプルを使って試験だが新しいウイルスが出来た。
まだ試していないのでどんな効果を発揮するか分からないが早速試験体0135に投与し観察してみたいと思う。
1月21日
投与した試験体0135から新たな実験体完成した。
腹部にはGウイルス特有の目が構成され右手には足先まで伸びる爪が生えている。
だが、繁殖機能は確認できず繁殖は不可能のようだ。
身体的機能はまだ確認できていないが明後日にでも実験を開始するようだ。
1月24日
実験体のテストが行われたがその能力に驚きを隠せない。
瞬時に回復する傷に想像を超えるパワー、相手をバラバラにする残忍性、そして変異する速さ。
今日の変異により左腕に新たに目が構成され短いながらも狩猟用と思える爪が生えた。
そして、名前をG−0135と名づけられ開発チームはかなり喜んでいたがこれより問題が出てくる。
このまま大きく変異していくと管理が難しくなるということだ。
下手をすれば犠牲者も出かねない。大きい研究施設に移すべきだ。
1月27
上層部のやつらは移送を認めなかった。この研究を独占したいのだろう。
今のところGに変化はないがこのままほっておくわけには行かない。
なにか手を打たないと・・・・・・・
1月30日
Gウイルスの試験ワクチンをG−0135に微量ながら摂取した。
これで少しだが変異を抑えられる。
独断行動なので他のものにバレてはいけないのでこのことは極秘にしておかなくては。
2月2日
なぜかG−0135の変異が激しくなった。
培養液の中でやつは大きくなりケースが耐ちそうにない。
何らかの対処を施さなければ・・・・・・・・
2月3日
G−0135が研究所内で暴れだし大量のTウイルスが漏れた。
研究員の大半はウイルスに感染し手の施しようがない。
抗ウイルス剤を散布してこれ以上の空気感染はないだろうし研究所の入り口は封鎖した。
仲間が本社に連絡を取ったが対策チームが到着する前に私は死んでしまうだろう。
Gがこの館内にいるがほかのものは誰も知らない。
あれがうろついているだけで私は・・・・・・
中途半端なところで日記は終了しておりケインは静かに日記を閉じた。
背後から扉の開く音が聞こえると反射的に振り向いたケインの目に映ったのはここに白衣を着た派遣研究員と防護服を着てMP5A5を持ったスタッフだった。
そして、ヘンリーの声と共に隊員たちは集められケインもそれに従う。
机を陣取るかのように座っていたヘンリーが口を開いた。
「調査チームの護衛にあたるため私とダニエル分隊の6名はここに残ることになった。
他のものは各自分隊を作り研究員の捜索と研究所の入り口を探せ。見つけたら必ず連絡をしろ」
ヘンリーはそれだけを告げるとそばにいた研究員に話しかける。
とりあえず、ケインはマイクの元へ行くとマイクは不安げな顔をして話しかけてきた。
「なあ、俺たちどこの分隊に行ったらいいんだ?」
「そういえばそうだな・・・」
「おい、お前ら」
ケインが考え込もうとすると別の場所から声が聞こえ振り向く。
声をかけた人物と思える隊員が手招きをしていたのに対しケインは素直に応じマイクと共に隊員に近づいていく。
「アンタがB小隊から来た2人だな」
「そうだが」
「ヘンリー隊長の命令であんたらを俺たちの分隊に入れることになった」
隊員はそういうと左手を差し伸べて握手を求めながら続けていった。
「E分隊長ののエリック・ボルフェントだ」
「・・・ケイン・リバー。後方支援担当だ。よろしく」
ケインは軽くエリックの手を握り握手を交わすとエリックはマイクの方を向いて声をかけた。
「お前は?」
「俺?マイク・へルビースト。前方警備担当なんだ」
「そうか、じゃあがんばってもらわなきゃな」
エリックは素っ気な返事を返すとマイクの肩を叩き彼のそばにいた2人の隊員のところまで歩いていく。
「紹介するよ。こっちが通信担当のロンと重火器担当のジョニーだ」
「やあ」
「よろしく」
ケインとマイクは紹介されたアジア系の顔立ちをしているロンとアメリカ系の顔を持つジョニーと握手をするとエリックが続けていった。
「さて、これからチームとして動くからよく聞けよ。俺たちは今から研究員と研究所の入り口を探す」
「それはさっきヘンリー隊長に聞きましたよ」
エリックの話を聞いていたロンが突っ込むとエリックは顔を顰め話を続ける。
「研究員の捜索に関しては他の分隊が担当することになった。まあ、俺たちだけの特殊任務だな。入り口を発見次第報告。たぶん入り口はロックが掛かっているから担当の調査員が開けてくれる。入り口を開けたら調査員と同行して研究所の自爆システムを作動させ脱出する」
「ウイルスが漏れたんだろ?入っていいのかよ」
エリックの話を聞いていた重火器担当のジョニー・デファデンスが口を開く。
「それに関しては大丈夫だ。すでに研究員がウイルスが漏れた時点で抗ウイルスを研究所内に散布してあるらしい」
「研究所の自爆システムを使うのならなぜ館にも爆弾を仕掛けるんですか?」
それを聞いていたロンがエリックに質問を投げかけエリックは少し考え込んだ後、口を開け返答した。
「さあな。念のためじゃないか?他に質問は?」
ロイの質問を返し少しウンザリした表情でケインたちを見るとエリックは手を叩き声を張り上げてながらM4A1のグリップを握った。
「さて!時間が惜しい。行くぞ!」
エリックが先頭に立ちその後をついていく形でケインはエリックの後を追う。
ドアノブを握り右へと回し手前に引くと音を立てながらドアが開きエリックは躊躇なくその中へと入りケインたちも彼に続く。
そこは薄暗い闇が支配する通路で窓から指す月明かりが唯一の光だ。
ケインたちはすぐさまポケットライトの電源を入れライトが灯るとエリックはM4A1を構えて前へと進んだ。
この通路からもなにやら別の臭気が漂い尋常ではない匂いにマイクが顔をしかめながら鼻を啜る。
前へと進むごとにその匂いは強烈になりそして長い通路を歩き続けていたエリックの足が止まり止りきれなかったロンがぶつかる。
「す、すみません」
「しっ!あれを見ろ」
エリックはポケットライトを通路の先に向けて照らすとそこには白衣を着た男の背中が照らし出されていた。
後ろから見た限り男は首をうつむけたまま立っておりこちらに気づかない様子であった。
そして、エリックはその男がここの研究員だと分かるとすぐさま声をかけ始めた。
「おい!あんた!」
その声に反応するかのように白衣を着た男はこちらに振り向くと体を向けヨロヨロと歩き出した。
こちらに体を向けた男を見たケインたちは驚きを隠せなかった。
白衣は血に染まり腹部の辺りからは腸がはみ出て顔は薄黒く頬の部分はごっそり剥けていて明らかに尋常ではなかった。
ケインたちは即座にM4A1を向けるとトリガーに指をかけロンが声を上げて叫んだ。
「今すぐその場にひざまつき両手を上げ頭の後ろに回せ」
ロンの忠告に対しまったくの反応を見せない男は徐々に彼らとの距離を縮め数メートルの距離まで来ていた。
エリックがM4A1のトリガーを引き放たれた3発のうち2発の銃弾は腹部に命中しドス黒い血が流れ残り1発の銃弾は心臓がある位置に命中し白衣を着た男はよろめきはしたが倒れずこちらに顔を向けると再び歩き出しうめき声を上げて近づいてくる。
それを見たケインたちが連続してM4A1のトリガーを引き続け連続して放たれた5.56弾は男のあらゆる場所へ命中し血を流しながらよろめきなおも接近し続ける。
それを見たケインとマイク、ロンとジョニーは後ろに下がるがエリックはその場にとどまり男は口を開け目の前にいたエリックに襲い掛かろうとするが男があけた口にM4A1の銃口を突っ込むとトリガーを引いた・・・・・・・・