第1章
1999年 2月9日 18:46 サウスパークシティ郊外上空
森は深い霧と漆黒の闇で覆われていた。
サウスパークシティ郊外のサウスパークフォレスト上空を飛行していた大型輸送ヘリ4機の内、一番先頭を飛行していたヘリの中で黒いコンバットブーツに灰色のサバイバルズボン、腕と足につけているプロテクター緑色のウェアを覆うアンブレラのシンボルである傘マークに剣が刺さったエムブレムが刺繍されているタクティカルベストを着込んだ兵士たちが乗り込んでいるヘリの中で1人だけコンバットナイフを指でたくみに回している男がいた。
彼の名前はケイン・リバー 元アメリカ ロサンゼルス警察署の警官だった男だが数年前に犯人の車両を追跡中に7歳の男の子を跳ね飛ばしたことがトラウマになり警官を辞職。その後、彼の腕と才能を見込んだアンブレラの情報部が彼を雇いUBCSに入隊させたのだ。
ケインは静かにナイフを振り回していると向かいの席に座っていた全部隊の総隊長であるロメオ・カープスが声をかけた。
「ケイン・リバー。ナイフをしまえ」
「了解隊長」
ケインは素直に総隊長であるロメオの指示に従うと着込んでいるタクティカルベストの胸の部分につけてあるナイフポーチにナイフを仕舞いこむとアサルトライフル、M4A1のストックを地面へと置き、銃口部分をしっかりと両手で握り支えるとまぶたを閉じて静かにヘリのローター音を聴いていた。
『目標地点到達まで後12000メートル。各員降下準備へと取り掛かれ』
パイロットのアナウンスと共にヘリ内部の隊員たちに衝動が走り慌しくなる。
木々が生え広がる森々の先の開けた場所に一軒の館がパイロットの肉眼で確認されはじめパイロットは仲間のヘリに通信でそのことを知らせると同時に後部ハッチのロックを解除する。
速度を落とし輸送ヘリの後部ハッチがゆっくりと開き始めパイロットたちはゴーグルを着用し始め開けたハッチから外の様子を伺う。
冷たい風が中に吹きつけ隊員たちの体を刺激し何人かは身震いする中ヘリは館の前の広い空間でさらに速度を落とすとホバーリングしそのままの体制を維持すると完全に開けたハッチから降下用のロープが数本下ろされロープの先端が地面へと到達するとハッチに一番近い隊長のロメオが声を張り上げて言った。
「よし!降下するぞ!」
ロメオが叫ぶと同時にロープを伝って総隊長のロメオと他の隊員がほぼ同時に降下した。ヘリのローター風で舞い上がる土ぼこりを無視しながら他の隊員が地面へと足をつくのを確認した隊員が次々と降下していく。
最後のグループの中にケインが首を回しながら準備をし閉じていた目を見開いた瞬間ロープにしがみ付き降下した。
ケインはロープを伝って地面に降下すると足が地面へとつくと同時にM4A1を左右へと向け警戒態勢へと入る。
他の隊員がしゃがみこんだままケインたちの降下を見届けると計50名のUBCS隊員がここに終結する。
降下し終わった隊員を見届けると輸送ヘリはそのまま上空を飛び回り他のヘリと共に上空を飛び回りながら待機する。
「よし、あまり時間はないから皆よく聞け。ブリーフィング通りA小隊とB小隊は館の正面ロビーと東側居住区を確保。C小隊は付近の森の調査。D小隊は館の正面ゲートで待機しろ。各部隊行動開始!」
ロメオの指示に従い各部隊が行動を始めケインが所属するC小隊が与えられた任務は森の調査のためすぐに館近くの森へと入り込んだ。
深い霧とすべてを覆い尽くす闇の中、ケインたちはポケットライトで辺りを照らしながら森を進んでいた。
視界が悪くまったく前が見えず調査をする意味があるのか疑問に思っいるケインはあえて声に出さず心の中にそのことを仕舞いこみながら歩き続ける。
ケインを見て後方にいた黒人のUBCS隊員がケインに近づくと声をかけてきた。
「なんか出てきそうな感じだな」
「・・・怖いのか?」
「少しな。意外と幽霊とか信じるほうだ」
ケインの話すことに対し微笑するとさらに男は続けて言った。
「俺、マイク・へルビースト。よろしくな」
「ケイン・リバーだ。こちらこそよろしく」
2人は口だけの自己紹介を済ませると辺りを見渡しながら散策に集中する。
ケインのC小隊は森の中に入り込んで15分が経過し何も進展がないまま森の奥へと
進んでいると霧で見えない森の奥から突如、不気味な唸り声が聞こえC小隊の隊員が
唸り声の聞こえた方向へと反射的に銃を向ける。
「なんだ?」
「動物がいるんだろ」
「オオカミか?」
隊員たちがそれぞれの予想を言い合っていると先頭にいた小隊長が腕を上げ隊の動きを 止めると口を開けて指示を出した。
「各員、散開して調査しろ」
小隊長の指示通り隊員たちは横に広がりながら霧で視界が悪い林の中を歩き枯れ葉と小枝を踏みつける音だけが辺りに響いた。
ケインとマイクが一緒になって目を凝らしながら散策する中、1人の隊員が顔をしかめながら1人先へと進んでいた。
彼自身も自分が進みすぎていることに気づいていないのだろう。
隊員はM4A1を構えて警戒しつつ凹凸になって足場が悪い林道を進んでいく。
そして、2本の木が隊員の視界に入ると同時に霧の向こうから何かの足音が聞こえ思わず銃を向けるが足音の主らしきものが霧の中から飛び込んできて隊員に飛び掛ると‘それ’は凶暴な性格と牙を持って隊員を襲った。
‘それ’に襲われた反動で銃を落としてしまった隊員が必死で‘それ’に抵抗しながら襲ってきた‘それ’を恐怖で満ちた目で確認する。
それは皮膚が崩れ落ち異臭を放っていたが間違いなく軍用犬として使われている犬のドーベルマンだった。
ただしその外見は腐っているように見えその凶暴な性格と鋭い牙から逃れようと必死にドーベルマンを拳で殴りつけたがドーベルマンは怯むことなくただ飢えた声を上げながら隊員に襲い掛かりそして、隊員が放ったパンチが犬の顔面に当たらずに外れた瞬間、ドーベルマンは隊員の喉に噛み付くとその肉を食いちぎった。
「ウッ!」
声にならない叫びと激痛に苦しんでいる隊員を無視しながらドーベルマンは隊員の顔や腹部に噛み付きその肉を食いちぎるとそれを食した。
やがて隊員は力なく絶命すると獲物を刈り取った喜びにドーベルマンは吼えた。
その声を聞いた隊員たちはビクつきながらもそのまま前へと進むと1人の隊員が声がした方向へ走りながら向かうとズタズタにされた隊員の死体を発見し絶句すると同時にこの隊員を殺した‘何か’がその場にいないのに即座に銃を辺りへと向け隊員を殺した何かの襲撃に備える。
だが、霧と闇で何も見えない中その行動は無意味に近く虚しくポケットライトだけが霧を照らす。
だが、隊員を殺した地獄の番犬は確実に次の獲物を狙いあわてて銃をあたりに向けている隊員に狙いを定める。
隊員の体を恐怖が支配しそれが限界に達しそうになる。地面を蹴る小さな音と共に後ろから何かが飛びつき隊員を押し倒すと倒された隊員の足に激痛が走る。
「ギャァァァァァァァァァ!」
あまりの痛みと恐怖に驚いた隊員が手に持っていたM4A1を自分より下半身したの辺りに目掛けてトリガーを引く。
聞こえる自動小銃の銃声にケインがM4A1のセフティーを解除し銃声が聞こえる方向へ走っていくとそれを見たマイクが同じようにセフティーを外し彼の後に続いていく。
ケインとマイクが銃声と悲鳴が聞こえた方向へと駆けつけようとしたがすぐにその足は止まった。
辺り一斉に叫び声や悲鳴、自動小銃の銃声が聞こえ隊員たちを襲う何かが複数存在していることをケインは認識する。
そして、パニックになってしまったのか霧の奥から1人の隊員が体中血だらけになった体で笑いながら歩いているとケインが彼に近づき肩を掴むと隊員の目を見て睨み付ける。
隊員は静かに黙り込むと一瞬にしてケインたちがいる空間をなぞの臭気が覆うと突然、隊員は吹き飛ばされ地面を滑ると一定のところで停止するが彼の身を複数の何かが襲い彼の体を引き裂こうとする。
ケインとマイクはゆっくりと首を吹き飛んだ隊員の方向へと向けるとそこには信じられない光景が広がっていた。
そこで目にしたものは2匹のドーベルマンが隊員に襲い掛かり隊員は足と右腹部を噛みつかれ必死になって助けを求めているところだった。
その異様な形状をした犬の姿を見てケインとマイクが反射的にM4A1を向けるとトリガー引いた。
連続して放たれた5.56弾がドーベルマンの体と頭に命中し低い鳴き声を上げて転がった。
辺りから聞こえる銃声が少なくなる中、マイクは噛み付かれた隊員の肩に腕を回し立ち上がらせるとケインは地面を小さく蹴りこちらに近づいてくる音の方角に向かって銃を乱射しその1発が近づいてきたどーベルマンに当たったのか霧の奥から鳴き声が聞こえた。
「退却するぞ!」
「お、おう」
ケインの指示に従うようにマイクが怪我をした隊員を抱えながら自分らが進んできたルートを戻り始める。
後ろを振り返り聞こえてこない銃声と叫び声を悔やんだ表情を見せながら霧の奥から飛び込んできたドーベルマンに向かって銃弾を放った。
ケインが援護する形でマイクと怪我をした隊員をカバーしながら姿が見えないドーベルマンに向かってトリガーを引く。
銃を撃っているケインに向かってマイクが声を上げてケインに問いだした。
「なんなんだよあの犬は!」
「俺が知るわけないだろ!とにかく今は逃げるんだ!」
ケインとマイク、そして怪我をしてヨロヨロになっている隊員は進んでいくうちに徐々に霧が晴れていくのがわかり視界がよくなりはじめる。
そして、木々の間から広がる空間が見え始めそれが館の広場だとケインは分かるとマイクと共に林を抜け広場へと出た。
だが、そこで見た光景にケインは目を疑った・・・・・・・・・・・・・