biohazard -Power to flower-

Epilogue
〜One Step〜

生々しく残る血痕。
床に散らばる無数の薬莢。
鼻を突く硝煙の香り。
崩れ果てた工場に、軽い金属が床に落ちる軽快な音が響いた。
ミリアの腕からハンドガンが零れ落ちる。新しい血が床に僅かに広がる。
「ミリア・・・ちゃん・・・?」
ファイブセブンもまた、その行動に驚いていた。
彼女の意図が読めなかった。自分が考えていたのと違ったから。
カナは、ミリアに向けて一歩歩き出す。
彼女の体が、前のめりに崩れ落ちかけた。
「ミリアちゃん!」
カナは駆け出し、彼女の体を抱きとめる。
「ははっ、やっぱ・・・痛いな。」
血が流れているのは、彼女の左肩からだった。
「な、なに考えてるの!?」
彼女は自分の力で立つと、傷口を押さえる。
「ここに・・・バイタルの検出と盗聴のチップが埋め込まれているんだ。
通常本人が死ぬとその作動も停止して、死亡を本部に伝えるけど・・・。」
ミリアは小悪魔的な笑みを浮かべた。
「発砲前の会話を聞けば、きっと私は死亡したことになった。
アンブレラにいた、”ジョーカー”という人物は死んだんだ。」
「・・・そ、それって・・・。」
カナの表情が見る見るうちに綻んでいく。
「カナ・・・私は、貴女と共に歩みたい。」
「ミリアちゃん!」
カナが彼女の胸の中に飛び込んでいく。彼女はそれを優しく受け止めた。
「もう・・・無茶なんかしたらダメだよ。」
「お互い様だよ。でも・・・それはちょっと聞けなさそうだ。」
ミリアはカナの後ろにいる、ファイブセブンを見据える。
だがその瞳に敵対心は無かった。
「アンタ、カナをこれからどうする?」
そう問われて、彼はすぐに答えられなかった。
彼女が心配なのは確かだ。手助けをしてやりたい。
だが自分と彼女は、別の世界の人間。深く関わってはいけない間柄だ。
それもまた、あやふやになってきてしまっているが・・・。
「カナの力になりたい・・・けど、俺は今の仕事をやめるわけには・・・。」

「なら、彼女も同じ世界に引き込めばいいんじゃないかね。」

突然の声に三人は振り向く。
「ガバメント。2人は無事か?」
「命に別状はないよ。」
そこに、イーグルを抱えたガバメントがいた。
「あ、あんた・・・!」
「やぁ。外で会うのは初めてだね。」
ミリアがその顔を見て驚く。
ミリアが知る彼女は、ガバメントという名ではなかった。
彼女が知るその女性の名は、”フォックス”。
第四研究所の依頼をこなしに来た請負人だった。
「おっと、先に言っとくけど偶然だからね。あんまり怒らないでおくれ。」
「そんなつもりはない・・・それよりさっきの言葉はどういうつもりだ?」
ミリアが睨む。
それをガバメントは髪を撫でて受け答えた。
「そのままの意味よ。カナをウチの事務所で雇うの。」
「そんな危険な真似を・・・!」
「いや・・・悪くないかもしれない。」
ファイブセブンがそう答えると、ミリアが唖然とする。
「あ、あんたまで何言い出すんだ!」
それを諭すように、ファイブセブンが彼女の方を向いて説明する。
「よく考えろ。カナだってもう狙われる身なんだろ?それなら出来る限り多くの時間を一緒に過ごしていたほうが安全じゃないか?」
「そ、そりゃそうだけど・・・。」
ミリアが黙り込む。
彼らの話を聞いていたカナが話しかける。
「あの・・・。」
三人がカナに振り向いた。
緊張して、彼女は一歩後ずさる。
「私でよければ、是非一緒にいさせてください。」
「か、カナ・・・。」
「いいの。私にとってはそれが一番良い方法だと思うから。」
「・・・楽じゃないぞ?」
「ファイブさんと一緒なら、私はそれでも構わない。」
ファイブセブンが手を差し伸べる。
カナは迷わず、その手を掴んだ。
「アンタはどうするんだい?」
ガバメントはミリアに問いかける。
彼女は溜め息を付き、当然のように答えた。
「カナと一緒にいくさ。自分で言うのもなんだけど、戦力になるよ。」
「だろうと思った、歓迎するわ。」
ガバメントもまた、ファイブセブンがしたように手を差し出す。
ミリアはその手を掴んだ。
『ようこそ、グレイフォックスへ。』

黒い一機のヘリが、アンブレラセントブリーズ本社の屋上に降り立った。
中から出てきたのは、黒い服の男ただ一人。他には操縦士しかいない。
彼はアタッシュケースを片手に、ヘリポートに佇む女性に近づいた。
「任務は成功。目標物を確保しました。」
「ご苦労様。流石USSのエースね。」
「今回は自分だけではダメでしたがね・・・。疲れているので失礼します。」
男は女性─カズエの横を通り過ぎてエレベーターに乗り込もうとする。
彼女はその背中に声を掛ける。
「本部からの伝令よ。あなたはもうしばらくだけここに滞在することが決定したわ。」
彼の足が止まる。
彼はもう一度カズエを見た。
「・・・どういうことです?」
「近々何か大事な任務の指揮を執ってもらいたいそうよ。詳しいことは自分で聞いて頂戴。」
「わかりました。では部屋を借りたいのですがよろしいですか?」
「どうぞご自由に。ゆっくり休んでまた働いて頂戴。”死神ハンク”。」

「えぇ、僕は一向に構いませんよ。」
「ま、迷いもせずに・・・。」
いとも簡単に、2人がグレイフォックスで働くことは許可されてしまった。
パイソンはこうなることがわかっていたかのように思えたが、真意は定かではない。
ただ、カナだけならまだしもミリアまで許可されるとは彼らは思わなかった。
その辺は、彼の寛容さが功を奏したのであろう。
「やったね!一緒に頑張ろうね。」
「そんなことよりカナが一流のハッカーだったなんて・・・全く世の中どうかしてる。」
ミリアは喜ぶのも束の間、頭を抱えてソファーに座り込む。
傷の手当はもう済んでいた。しばらく安静にしていれば元通り動かせるだろう。
「さて、ひと段落着いたところで私のバイクについて話し合おうじゃないか。」
「だ、だからあれは俺の所為じゃなくてだな・・・。」
「どうかしたの?」
カナが2人の会話に混ざりこむ。
その問いに、ファイブセブンが応える。
「昨夜俺らが乗って、木っ端微塵にされたバイク・・・あれガバメントのだったんだ。」
「えぇ!?そうなんですか?」
「カナは気にしなくていいのよ。悪いのは全部コイツだから。」
「でも使ってよかったんじゃないのか?」
「誰が壊して返せっていった・・・!」
話の意図がつかめなかったカナは、そのときようやく思い至った。
昨夜、自分たちを助けてくれていたのが彼女だということに。
お礼を言いたくても、喧嘩を始めてしまった2人の間に割ってはいる気はなかったので、それはまた今度の機会に回す事にした。
「テンドウさん、さっそくで悪いんですけどこちらの席へ。」
パイソンが彼女を呼び、デリンジャーのデスクに座らせる。
「情報の整理をお願いします。依頼のメールとそうでないものを分けてくれれば結構ですから。」
「あ、はい!」
彼女は慣れた手つきで受信ボックスのメールを読み始めていく。
新しい仲間に囲まれた、新しい生活。
一つの、ただの一般人だった可能性を捨て、裏社会の世界に足を踏み入れたカナだが、恐れることは無かった。
頼もしい親友が傍にいて。
頼りになる仲間たちが傍にいて。
そして・・・彼が傍にいる。
「それ依頼だぜ?」
「え、嘘!」
ファイブセブンはカナの隣から画面を覗き込む。
彼の顔が触れそうで、カナは自分が赤くなるのを感じた。
「いいか、暗号化されているのも結構あるからな。
流石にまだわからないだろうから怪しいと思ったら誰かに聞いて確認してくれ。」
「じゃ、じゃぁ!」
立ち去ろうとするファイブセブンの裾を、カナは握り締める。
「私の傍に、いてください・・・。」
「あ、あぁ・・・。」
珍しく、ファイブセブンは彼女の仕草が愛らしく思えてしまった。
彼は彼女の傍に寄っていく・・・二人の視線が交わった。
「狭い室内でイチャつくなよ・・・。」
『なっ!』
彼らの横を、いつのまに戻っていたグロックが通り過ぎながら二人に言った。
カナは顔を真っ赤に染めてデスクに顔をうずめる。
ファイブセブンはグロックに抗議しに、彼の下へ向かった。

─彼が傍にいる・・・それだけでいい─

カナは今、ゆっくりと歩き始めた。

THE END

─────────────────────────────────

〜あとがき〜

こんにちは、またまたバッドボーイです。
二作目もよ〜〜〜〜やく完結を迎えることができました。
個人的には色々と端折ってしまったのですが・・・あまりバイハ的な戦闘シーンがないので退屈にさせてしまっても悪いので削除できる所は省略しました。
今回はゾンビは0でしたね。バイハの裏の主役なのに・・・。
とにかくひと段落して、物語の導入部分も終わりました。
次からは場面を別の場所へ移して話を書いていこうと思ってます。
今度こそは!バイハっぽく書くのでがんばりたいと思います。

さて、今回のサブタイトル-Power to flower-は「開花する力」という意味があります。
カナが完全にメインの今回、たった一人で巨悪に立ち向かうか弱い少女が、自分の力の全てを出し切って見事に打ち破るちょっとお約束な話でした。
特に深い意味をこめてつけた物ではないです、はい。

今回は大した複線張ってませんな。
一作目のヤツも拾いきれていないし・・・まだ拾うつもりないだけなんですけどね。
でも一つだけ物語の本筋に繋がる複線を張っております。
機会がありましたらよく探してみるのもいいかも?不自然すぎてわかりやすいかもしれないですが。

次にグロックがメインの-intermission-「幕間」。こちらももっと細かく書きたかったなぁ。
ただ行数が果てしなく多くなってしまうのでやめておきました。それやるなら別のタイトルで書きますしね。
ちなみに彼が戦った首の長い化け物・・・あれはリッカーがさらに変異したモノです。
バイハ1リメイクでクリムゾンヘッドがいたじゃないですか。
あれのように、リッカーもまた更なる変異により異形の姿にかわったって設定でした。

グレイハウンドの彼らの説明も行きましょう。
まずガバメント姐さん。
彼女はコルト社のGovernmentから。
完全に余談なのだがこれは某雑学番組に出演したことがある。
日本刀VS拳銃という企画である。結果、ガバメントは敗北・・・。
日本刀ってすごいのね。
もう一人は出番が少なかったけどイーグル。
彼はIMI製のDesertEagleから。
バイハ2のレオンが使ってましたね。シルバーモデルという設定なのでお揃いです。

それでは今回も舞台裏をご用意致しましたのでよろしければそちらもどうぞ。
ここまで読んでくださった方、真にありがとうございました。
ご感想やご意見お待ちしております。それではまた。



─────────────────────────────────

ばいおはざぁど
−ぱわぁとぅふらわぁ−

水浸しの室内。塗れた書類の山と、機能を停止したコンピューター。
湿ったデスクに、今回の座談会の面子が席を並べていた。
当然椅子も湿っている。
「・・・誰よ会場をこんな状態にしたのは。」
「ごめん、私・・・。」
エリーが誰とともなくつぶやく。すかさず反応したのはカナだ。
ここはキングバーナードホスピタルの会議室である。
前回同様掃除は未完状態、というかやっていない。
「ま、まぁ仕方なかったということで・・・ほらほら、ピザ食べよ。」
ミリアがカナを庇って目の前に積まれたピザの山を配り始める。
上面には”ラッキー・ピッツァ”の文字が。
「まぁ会場の状態なんてどうでもいいんだけど・・・今日はアルコールはでないの?」
ガバメントが不満そうに周りを見渡す。
水とピザしか見当たらない。
「予算の関係で無理でした。誰かさんがピザを大量に注文したもんで・・・。」
「もも、申し訳ない・・・。」
カナが又も一瞬の間もおかずに答えた。
だが抗議する者はいない。ストーリー上ある程度しかたないからだ。
「ま、俺は腹に入れば何でもいいんだがよ。」
ファイブセブンがいの一番に箱を開けて食べ始める。
「あ、まだ乾杯してないのに!」
「水でか?」
デリンジャーが反論を受けて何かを言いたそうだが何もいえなかった。
「ボクはそんなことよりお腹減ったよ。食べてもいい?」
そういった途端、ティアの腹の虫が鳴いた。
それに釣られるように何人かのお腹も。
「えぇい、この際細かいことは気にしないぞ!この二品で大いに腹を満たそうではないか!」
エリーが大声を張り上げて言う。
一同もヤケになったのか、歓声を上げて食べ始めた。

「ところでガバメントさん。」
「ん、どうしたのカナ?」
ガバメントの下にカナが寄り話しかけた。
「研究所の地下で、ファイブさんと合流する前の私を助けてくれましたよね?
合流後ならわかるんですけど・・・どうして私を?」
「一作目の2ndから3rdの間にあいつが貴女のことを話してくれたのよ。
記憶力は良いから、覚えていたの。まさかあんなところで見かけるとは思わなかったけど・・・。」
「どんな話したんですか彼は?」
「えぇ、とってもかわ──」
っと、ガバメントの顔面に冷えたピザが直撃した。
投げたのはファイブセブンである。この時周囲の空気が一変する。
「・・・覚悟はいいようね。」
「わ、悪いつい!」
弁解するよりも早く、ガバメントは無数のスローイングナイフを抜き出し、宛ら嵐の如くそれを投げつける。
「うわぁー!喧嘩は外でやってくださいよー!」
グロックは動こうとしないイーグルを無理矢理床に伏せながら叫ぶ。
ファイブセブンはこれ以上会場が荒れるのを避けるため、入り口へと向かう。
それをガバメントが追いかける。しばらくして音が止んだ。
帰ってきたのはガバメントだけだった。
一同、彼の行方を探るものはいない・・・ご愁傷様。
「しかし、デリンジャーさんの乗ってるバンなんかすごいですよね。」
「まぁね。色んな武装が隠されてるわよ。バックアップも楽じゃないんだから。」
「例えば?」
エリーが問う。デリンジャーが説明を始めた。
「装甲は防弾仕様、強化ガラス完備。後部座席にはRPGと弾頭が二発。
運転席と助手席のシート下に数種の火気を装備してあって、普段はつけていないけどサンルーフの後ろに重機関銃や車載型グレネードも搭載可能よ。」
「・・・ボ○ドカーみたいだね。」
「いや、流石にアレには負ける。」
デリンジャーは関心するように言うが、十分そのバンもすごいと一同は言いたげだ。
「装備関連で思い出したけどファイブさんが普段使ってるフックショットはなんですかあれ。
コンクリートにめりこむし強度はすごいですし。」
「・・・あれは、あまりツッコんではいけない物。作者も反省している。」
イーグルは呆れたように答えた。
「でも使って掲載してしまった以上後には引けないと・・・。」
ミリアの問いに彼はただ頷いた。
「架空のとんでも兵器ということなんだよね。まぁほら、仮にも主人公たるもの多少とんでもなくちゃやっていけないわけで・・・。」
「いいのかそんなんで?」
「いいのよ。それより今回は年長者組がいないみたいだけど?」
「作者の都合で呼ばれてないみたいだね。あんまり人が多くても大変でしょ?」
「・・・可愛そうに。同じ準レギュラーなのに。」
ティアがしみじみと言う。
彼女やエリーも二作連続ででているが、活躍はいまだにない。
というか今作ではほとんどでていないわけで。
ついでに言うと次回作には名前すら出る予定はない・・・。
「そろそろ良い頃合だね。お開きにしましょうか。」
「そうだね。次の仕事あるし。」
「デリンジャーは次回作もでるの!?」
グロックが驚いたように聞くと、デリンジャーは当然かのように答えた。
「通信役なんだから、グレイハウンドの誰かが出るなら出るでしょ。」
「む、むぅ。羨ましい。」
「よし、これからみんなで出場できるように抗議しにいくよ!」
「おー!」
エリーを戦闘に、何名かが後に続いて出て行った。
それを見て、デリンジャーとイーグル、ガバメントが同時に呟いた。
『・・・無理だろ。』

お終い