【第三話】

「てか、ここ私の部屋の向かいじゃない・・・」
ヨーコは寄宿舎に着いてから、少し驚いていた。『新人の護衛兵』緊張が走った。彼らは、反アンブレラ組織の施設を死守するために作られた戦闘部隊であり、入隊試験から1年間の厳しいトレーニングを積み、さらに選抜試験を受けて、合格したら隊員にやっとなれるという程、実力主義の世界である。また、一部の護衛兵達つまり、血の気の多い奴らは、科学班や衛生班の人々に突っ掛かり、トラブルを起こす事もあった。
(ハァ〜どうしよう・・・)
しかし、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。深呼吸をし、ドアをノックする。中から足音がし、ドアが開かれ、出迎えた人物にヨーコは言葉を失った。
「デビット・・・」
デビット・キング。ヨーコと同じラクーンシティ脱出に成功した民間人の一人だ。1年ぶりの再会となるが、以前よりもさらにガッシリとして目付きはますます鋭いが、その瞳には、驚きと再会を喜ぶような色が映されていた。
「ヨーコか?・・・」
声も半信半疑と言った感じだろう。ヨーコの顔が真っ赤になっていき、
「そ、そうよ・・・」
しばらく互いに視線があったまま沈黙し、最初に視点を逸らしたのは、デビットの方だ。手招きで『入れ』とうながす。
(恥ずかしい・・・)
ヨーコは今にも消えたくなった。この1年で、デビットはさらにたくましくなった。反面、自分は科学班に入る前から半年程フェニックスで生活しているというのに、血色の悪い肌をしている。悪く言えば、ゾンビだ。デビットの部屋は酷く殺風景で必要最低限の家具しか置かれていない。簡易ベットに小さなライト。クローゼット。丸テーブルには、椅子が2つしかない。
「座ってくれ。」
低いデビットの声が響いた。ヨーコは無言で座る。
「顔色が悪いみたいだが?」
デビットがここまで人の事を心配するのは珍しい。マークのおかげかもしれない。
「デビット、マークはどうしたの?」
「今は、サクラメントにいる。俺もあの日から、数ヶ月そこに留まってたが、サンフランシスコの方へ引っ越した。そこに、反組織の一員がいると聞いてな。」
「そう。」
少し安心した。あの日から、平凡な生活を送る事はほぼ無理だ。ラクーンシティの生存者で真実に気付いている者は、自ら進んで戦いに行く。アンブレラという怪物に。けれど、真実に気付きながらも平凡な生活を願うのは多い。マークはそれが叶ったのだ。よかったのかもしれない。そんなヨーコの表情を見て、デビットの心は和んだ。だが、同時に悟った。ヨーコはフェニックスにやって来て、己の罪滅ぼしをしていく内に、心に大きな新しい傷ができ始めているという事に。
「ヨーコ。」
デビットの声が沈む。
「えっ!?何?」
慌てる彼女が、気付かない位に微笑すると、
「互いにな。」

第四話へ